北海道自動車情報誌「カーピアCelhome(セロム)」は寒冷地の視点で車の特徴を紹介|発行:株式会社イベント工学研究所

北の大地・風を読む

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

2019年6月+7月 新緑号

人間関係が薄れていく
IT・AIの「人生100年時代」
− ”哲学対話”をもっと身近にしよう! −

哲学を求める時代?
"哲学対話”には力がある!”


 医学の進歩などで「人生100年時代」が、もうすぐやってくる。しかし、それは国民にとって果たして本当の期待感なのだろうか。否、多くの国民は「人生100年時代」を今、不安や焦燥感、閉塞感と感じる人が増えているのが実態であり、やがてうつ病発症社会にもなりかねないのである。
 今の日本社会に広がっているのは、将来への生活設計は自己責任という考え方だ。例えば、老後資産として65歳から30年間に年金以外に2000万円の資金が必要だとした金融庁の報告書をめぐり批判が強まっている。その上、人間関係の悪化、努力しても報われない社会に閉塞感を感じて いる人が多いのである。
 元号が令和になってから、皮肉にも令和の理念(期待感)に反するような悲惨な事件が立て続けに起きた。長期間就労せずに、引きこもりが事件の背景にあると報じられている。この中高年ロストジェネレーション(ロスジェネ)問題。仮に中高年のひきこもりの人達が働き始めたとして、そこに『希望』はあるのだろうか。そこに求められているは国の支援、社会保障であり、社会の共生である。
 一体、人はいつ「今」を楽しく、一生懸命生きれる社会になるのだろうか。
 IT・AI時代が今そこにきている。「人生100年時代」の備えの新しい考え(思想)の一つが「哲学対話」である。哲学について考える対話ではない。一人一人が哲学者のようにじっくりと自分と他者の言葉に耳を傾ける対話である。哲学は人々が今日を「善く生きる」ためのものだ。
 哲学対話は、子どもたちの思考力を養うために70年代にアメリカで始まった「子どものための哲学」に由来する。それは、哲学者の思想を教えたり抽象的な問題について議論したりするのではなくまた、各人が一人で思索にふけるのでもない。身近な問いから出発して、グループで一緒に問い、考え、話をしていくものである。ここでグループの定義を社会、団体、企業などと置き換えて考えるのもよい。
 日本における哲学対話の活動において、中心的な役割を担っているのが、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属共生のための国際哲学研究センター(UTCP)のうちの「Philosopnyforeveryone(P4E)」というプロジェクト部門だ。P4Eは、哲学対話を用いて、学校での哲学教育や、地域のコミュニティ作りなど様々な場面で実践する活動を行っている。
 P4Eなどが行っている哲学対話においては、対話を行いやすくするための幾つかのルールがある。①何を言ってもいい②他人の発言を笑ったり否定したりしない③話している人のことに耳を傾ける④話したくなければ話さなくてもいい⑤急がず、ゆっくり考える⑥結論はなくてもいい⑦分からなくなってもいい、というルールだ。
 すべての人が真に「共に生きる」社会をつくるためには、自らが本当に何を求めているかを考え、言葉にして他者に伝え、そして一人一人の思いを平等にじっくりと理解しあって、摩擦を解決しようとすることが重要である。それを可能にするのが哲学対話という方法なのだ。
 「何を言ってもいい」「否定的なことは言わない」というルールは、何を言ってもいいからこそ、思考に広がりと深まりが出てきて、対話が哲学的になる。
 いずれにせよ、これからのIT、AI時代という人間関係が希薄になりがちな社会に新しい息吹を与えるのが、共に話すことを通して共同で思考を広げ、深めていくという哲学対話に間違いない。
 夢と情熱によって人を動かした経営者として知られる本田宗一郎は「多くの日本企業で失われてしまったもの、それは夢の力により活力を引き出すこと、未来へ向けて社員に希望を持たせ、情熱を持って実践させる経営者の姿勢である。技術よりまず大事にしなければならないのは、人間 の思想だと思う。人間を根底としない技術は何も意味をなさない」と思想・哲学の重要性を説いた。
 哲学対話をもっと身近にして、今日に生き、楽しく明日を語る社会にしたいものである。

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

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