北海道自動車情報誌「カーピアCelhome(セロム)」は寒冷地の視点で車の特徴を紹介|発行:株式会社イベント工学研究所

北の大地・風を読む

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

2017年12月+2018年1月 冬将軍号

物質よりも精神が豊かにならないと、真の幸福は得られない
…芥川龍之介「運」…

運とは「自分は運がいい」と信じることの習慣化で
 2017年(平成29年)もあとわずかだが、これから年末、年始にかけて年末ジャンボ宝くじ抽選会、神社、仏閣でのおみくじなど、「運を引き当てる」「運勢や吉凶を占う」行事で人は行き交う。このような幸運を引く運試しは人間の性といえるだろう。
 人は生まれつき運がいいわけではない。心理学のさまざまな現象を科学的に研究してきた結果、「運のいい人」「運の悪い人」の人生には大きく分けて四つの違いがあるという(リチャード・ワイズマン博士著/矢羽野薫訳・運のいい人の四つの法則)。
Ⅰ・運のいい人は、いつも偶然のチャンスに巡り会う。自分の人生にとって大きなプラスになるのは人と偶然会ったり、新聞や雑誌を読んでいて、たまたま面白そうな記事に気づいたりするのだ。一方、運の悪い人はそのような経験がめったになく、自分の人生にとってマイナスにしかならない人と出会ってしまう。
Ⅱ・運のいい人は自分でも理由がわからないまま、正しい選択をしているものだ。
Ⅲ・運のいい人の夢や目標は、不思議なくらい実現する。
Ⅳ・運の良い人には、不運を幸運に変える力がある。
 『運とは自分は運がいいと信じることだ』(テネシー・ウイリアムズ/作家)つまり、自分は運がいいという、プラス思考を「習慣づける」ことが運を招き寄せるのである。
 また、運を招くためには、損得ばかり追求してはいけない。代償を求めない行動こそが運を招き寄せる。打算のない真実の世界である。
そして、運を手にすることができるのは失敗にめげず挑戦し続けたときでもある。挑戦、失敗、挑戦、失敗、挑戦のくり返し、そこから運が開けてくるものだ。
 ビジネスの世界に名を残す人の多くにも、運が大きな影響を及ぼしている。日経新聞「私の履歴書」に登場する人物に、成功した大きな要因が偶然の出会いや幸運だったという実業家はたくさんいる。
 また、成功者といわれる人はみんなプラス思考で明るいのが特徴だ。
「精神的な幸福」と「物質的な幸福」本当の幸せとは……
 「幸福とは精神である」は、芥川龍之介の短編小説「運」(1917年1月発表)のテーマである。平安時代の「今昔物語」「宇治拾遺物語」を題材としたこの作品、精神が豊かにならなければ、真の幸福は得られない。なぜなら幸福とは精神だからという。
 「運」の小説のあら筋はこうだ。
 ある時、陶器師の翁が若侍に、次のような、神仏が授ける運の話をした。
 「今から3・40年前、酉の市で麻糸の店を営んでいる女が娘の時分に、清水の観音様へ願掛けをしたことがあった。どうぞ一生安楽に暮せますように……。母を亡くしてから、娘は困窮に喘いでいた。お籠(こもり)をして、満願の夜に、娘は観音様のお告げを聞いたと思い込む。お告げによれば、『ここから帰る路で、そなたに言い寄る男がある。その男の言う事を聞くがよい』……帰途、お告げのとおり男が言い寄ってきて、娘は強引に男の住処へと連れ込まれてしまう。怖かったが、観音様のお告げだからと、娘は男の言いなりとなり、夜が明けると、男に乞われるまま、夫婦となった。
 男は娘に綾と絹を与えると、日暮れには帰るからと出掛けてしまう。娘は心細く、また不審にも思い、住処の奥を探ってみると……、そこには盗品と思われる金品の数々。男が盗人であることは疑う余地がない。早く逃げなければ……と慌てる娘の傍らには腰の曲がった尼法師(老婆)、娘を逃したら、男にひどい目に遭わされるというこの老婆、しかし娘もここにいては命にかかわる……、いつしか争いとなり、娘は老婆の命を奪ってしまう。
 その後、娘は男からもらった綾と絹を抱えて、なんとか知人の家へ逃げ込む事ができるも……、なんだか表が騒がしい。そっと外を覗いてみると、あの男が盗人として捕まり、引っ立てられていく。娘は、その男に惚れていたわけでもないのに、急に自分がいじらしくなって、思わず涙を流した。
 娘はそのとき手にいれた綾と絹を元手に、今の商売を初めて安泰に暮らしている。観音様は娘に運を授けたのだ。
 それを聞いた若侍は、『それなら、そのくらいな目に遇っても、結構じゃないか』と言い、翁は『手前なら、そういう運はまっぴらでございますな』と言う」
  「物質的な幸福」を真の幸福だと考える若侍と、「精神的な幸福」の重要性を説く陶器師の翁と、果たしてどちらが本当の幸せなのだろうか……。娘は観音様に願かけしたところ、生活は安泰となったが、愛情には恵まれなかった。
 物質よりも精神が豊かにならないと、真の幸福は得られないという翁の教えである。

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

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