北海道自動車情報誌「カーピアCelhome(セロム)」は寒冷地の視点で車の特徴を紹介|発行:株式会社イベント工学研究所

北の大地・風を読む

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

2019年12月+2020年1月 冬将軍号

変貌を遂げる新時代
「世界のモーターショー」
− 変わる勢力図!中国、タイ、ジャカルタなどが台頭 −

 今、「世界5大モーターショー*(注)」が大きな変貌を遂げている。
 モーターショー成功の目安は、「来場者数」と「出展自動車メーカーのラインナップ」、「楽しいイベント」だった。それが、出展内容が電動車一色になり、また海外メーカーが続々撤退、さらに来場者数が減少しているなどで、世界のモーターショーは実質を取る商業的な、内容重視のEV祭り”モーターショー“に変容してきている。
 例えば、ドイツのフランクフルトで、かつては世界最大の規模ともいわれた「フランクフルトモーターショー(lAA)2019)」が9月に開催されたが、来場者数は前回を3割以上も下回る56万人だった。出展社は日本勢がトヨタのアライアンス(資本関係や事業連携関係)と日産のアライアンスメーカーが不参加。日本からの参加はホンダのみで新型EVを初公開した。また、フランスはPSA(プジョー、シトロエン)、イタリアはFCA(フィアット、アルファロメオ、マセライティ、フェラーリ)が不参加となるなど出展社が激減した。
 そうした中、会場内で一番積極的だったのがフォルクスワーゲン(VW)グループのEV車だという。VWグループがEVシフトにこだわる理由は、2015年に起きたディーゼル規制に対する不正が発覚した後、(EVシフトを)一気に推し進めることを宣言したからである。
 また、米国「ロサンゼルスモーターショー2019」(11月22日から12月1日開催)では、フォルクスワーゲン(VW)が電気自動車(EV)のコンセプトカー、BMWが新型EV、トヨタ自動車がSUV「RAV4」のプラグインハイブリッド車(PHV)をそれぞれ発表、電動車一色となった。
 「東京モーターショー」はかつて「世界5大モーターショー」のひとつといわれ、欧米のメーカーがこぞって参加。自動車のトレンドを世界へ発信するモーターショーとして存在感があったが、近年の開催では低迷気味だった。
 この10月に開催された「第46回東京モーターショー2019」は出展自動車メーカー数は、海外勢が続々と撤退。国産自動車メーカーの展示車も電動車が主役と発表され来場者数が危惧されていた。しかし国内で発売が予定されている魅力的な新型車の展示や、様々な業種(オールインダストリー)の出展による展示と実演が功を成し、また高校生以下を入場無料に変更するなどの好企画で目標の100万人を大きく上回る130万人を集客した。ただ、新時代モーターショーのあるべき姿を具現していたが、来場者は以前のモーターショーの楽しさやワクワク感に物足りなさを感じたのではないか。
 では、世界のモーターショーが衰退かと言えばそうではない。社会における自動車の在り方(環境・エネルギー、使用の仕方)や世界の自動車市場(購買力)が変わってきていることから、モーターショーの勢力図も変わってきているのだ。
 つまり、巨大市場の中国で行われるモーターショーの台頭である。中国では毎年、「広州モーターショー」(広州市、2019年11月22日〜12月1日)と「上海際モーターショー」(上海市、2019年4月18日〜25日)の国際モーターショーが交代で開催されている。また「北京国際モーターショー2020」(北京市、2020年4月21日〜29日)はアジア最大級の規模で行われるオートショーだ。
 「広州モーターショー2019」ではトヨタがレクサス初となるEVを世界初公開したほか、ホンダは中国向けEV、ダイムラーと中国最大手の自動車メーカーBYDは電動SUV、テスラは現地で生産するEVを展示、その他中国のローカル企業も続々とEVを発表するなど会場はEV一色で賑わった。
 今や中国が世界最大の自動車市場(2018年の新車販売台数2808万台)であり、さらなる拡大が見込めるとあって、世界中のメーカーが競って出展している様相だ。
 また、中国以外で勢力を拡大しつつあるのは、インドネシアの「ジャカルタモーターショー」やマイカーブームで沸くタイの「バンコクモーターショー」(来場者数160万人)などのモーターショーだ。つまり、先進国に変わって中国や東南アジア地域におけるモーターショーが大盛況となっている。
 一方、先進国においてモーターショーの勢いが衰えた理由は何か。まず考えられるのは「若者のクルマ離れ」がある。さらにインターネットやスマートフォンの普及により、コンセプトカーや新車情報が手短に得られるようになったことも大きい。また、海外メーカーがモーターショーからの撤退、または出展規模の縮小の裏には、近年高騰を続けてきたショーの出展コストに対するコストパフォーマンスの見直しがある。
 さらには次世代技術「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)によってカーライフが変化してきていることや、新車のネット販売など、顧客へのアプローチ方法、マーケティング手法に大きな変化が起きたことで、相対的にモーターショーの価値が下がってきたからではないか。
 いずれにしても急速な技術革新が先進国のモーターショー離れを引き起こしていると考えられる。
*(注)①フランクフルト(ドイツ)②デトロイト(アメリカ)③ジュネーブ(スイス)④パリ(フランス)⑤東京(日本)

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

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