北海道自動車情報誌「カーピアCelhome(セロム)」は寒冷地の視点で車の特徴を紹介|発行:株式会社イベント工学研究所

北の大地・風を読む

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

2021年2月+3月 新春号

新型コロナ禍
経済と健康は両立する!

−需要変革期の今、新ビジネスのチャンス−

新型コロナは「敵」ではない。哲学者が説くウイルスとの「共生」とは

 人類はまさにパンドラの箱を開けてしまった。世界の新型コロナウイルス感染者数は2月9日現在、1億648万人(内、国内40万8272人)、死者は233万人(内、国内6605人)を超え、収束の兆しは見えない。さらに新型コロナウイルスの変質株感染が国内でも広がっている。国内の新型コロナウイルスのワクチン接種が2月中旬にも始まる見通しだ。特に札幌は東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマラソン(注)と競歩が8月に予定されているので早期接種が望まれる。人口の大半が摂取して免疫を獲得すればウイルスの流行が収まる「集団免疫」が実現できるからだ。
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 大病疫は人類が自然を無視し、高度経済成長を進めてきたことによる生態系の破壊にあると言わざるを得ない。つまり、ウイルス発生の背景には、都市化、集約化、グローバル化など濃密な社会生活の到来とこれに伴う自然破壊が、ペスト、コレラ、ポリオ(小児麻痺)、強カインフルエンザなどを覚醒させ拡散させてしまったのである。
 最近まで、地球温暖化など地球環境問題が深刻に採り上げられてきたが、その派生が新型コロナウイルスにほかならない。ウイルスは国境に関係なくパンデミック(世界的大流行)となる。
 北海道大学大学院教授などを歴任した石弘之先生は著書『感染症の世界史』(角川文庫)のなかで、「人間が次々と打つ手は、微生物からみれば生存が脅かされる重大な危機である。人が病気と必死に戦うように、彼らもまた薬剤に対する耐性を獲得し、強い毒性を持つ系統に入れ替わって戦っているのだ。まさに『軍拡競争』である」と述べている。一方、「微生物は、地上最強の地位に上り詰めた人類にとってほぼ唯一の天敵でもある。同時に、私たちの生存を助ける強力な味方でもある」とも言う。つまり、新型コロナウイルスは敵でもあり味方でもあるというのだ。
 また「新型コロナは『敵』ではない」という哲学者がアメリカにいる。米国ヒューストンにあるライス大学教授のティモシー・モートンだ。彼は人間とエコロジーの関係について研究を行う、21世紀を牽引する哲学者の一人である。
 「友」と「敵」とに分断され、多くの人々が家へと引きこもることを余儀なくされる世界情勢の中、ティモシー・モートンが、新型コロナウイルスに関するエッセイを執筆する上でテーマに選んだのは、意外にも「共生(Symbiosis)」という言葉であった。
 モートンがエッセイの中で紹介しているユニークな例は、新型コロナウイルスの影響で人間が家に引きこもったことで、人間と動物が共生する生態系が変化し、動物が人間の住む領域にまで戻ってきたという話だ。「コロラド州ボルダーの街路をマウンテンライオンが歩いている。通常は恥ずかしがり屋で、銃を持った人間の範囲内には入らないのだが」と述べる。
 「われわれは皆、共生的な存在であリ、他の共生的な存在と絡み合っているのです」とモートン。さらに「生(life)」とは、『活発に生きるalive』と『生き延びるsurvival』が織りなすこのようなジレンマそのものであり、どちらか一方に偏ってしまっては、われわれは『生』を失うことになる」と続ける。
 「生」の意味がもつこの「両義性(ambiguity)」に配慮することこそが、モートン流の「生の哲学」が重要視していることだ。
 「われわれ」は現在「人類の敵」である新型コロナウイルスを前にして家へと引きこもり、「パンデミック」という「戦争状態」を生き抜くサバイバル生活を送っている。政治の本質は「友」と「敵」との設定にあると戦間期に喝破したのはドイツの法学者カール・シュミットだったが、パンデミック下の政治的リアリティを支えているのはこのような「友敵」の論理だ。従来のエコロジー思想を刷新する「人新世」時代の来たるべき環境哲学であり、哲学者が説くウイルスとの「共生」である。
 企業も人も、地球と共生していくことが持続的な繁栄の前提である。日本が持続的開発目標(SDGs)の実現に力を入れていることは心強い。
 コロナ禍で世界経済の大部分が一次ストップしたことで温暖化ガスの排出量は大幅に減少した。モートンは「このウイルスは汚染と炭素排出を大いに縮小させている」とも指摘している。コロナウイルスの拡大が、企業活動を停止させ、数十億人を自宅にこもらせた結果、中国の湖北省からイタリア北部の工業地帯まで、世界各地の大気汚染レベルが急激に低下したという。だとすれば、パンデミック緩和後は環境対策をより一層重要視していく必要があるだろう。
 また国内では自宅勤務が増え、オンライン会議が広がって通信関係は活況であり、宅配需要も旺盛だ。外食や旅行業も感染症対策に対応した新たな需要があるはずである。またアウトドアやスポーツ向けの衣料を中心に扱う新業態の店舗(ワークマンプラス)、コロナ禍での「巣ごもり」需要の盛り上がりから家電やパソコン、ゲーム機向けの電子部品も伸びているという。新型コロナウイルスは新ビジネスのチャンス到来である。
 需要変革期には業態の変容や資本・人材の産業間移動を促し、新需要への対処に政策資金を集中すべきである。
 「経済と健康は両立する」のである。

(注)マラソンコースは、大通公園をスタート・フィニッシュとして、おおよそハーフマラソンの長さに匹敵する大きいループ一周と、約10kmの小さいループ2周で構成されている。さっぽろテレビ塔をバックにスタートしたのち、すすきの〜中島公園〜豊平川〜創成川通〜北海道大学〜北海道庁旧本庁舎(赤レンガ庁舎)と北海道・札幌の発展の歴史を巡リ、その魅力を世界に伝える最善のコースだ。だから北海道、札幌の威信にかけても開催地で選手、関係者、観客などからウイルス感染者を絶対に出してはならない。

本誌編集長 佐藤 公(さとうたかし)

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